「東京會舘とわたし」上下 辻村深月
東京會舘にはクッキングスクールがあって、いつか習いたいと思いつつ、他の料理教室に通ってしまったため、習いそびれてしまいました。
頭のどこかに「東京會舘」が存在していたような気がします。
「東京會舘とわたし」は東京會舘を舞台にした10の短編、上(旧館)、下(新館)に分けて描かれたものです。
「東京會舘とわたし」上下 あらすじ
東京會舘は1922年(大正11年)に宴会場、結婚式場、レストランを展開する「民間初の社交場」として皇居前に建てられました。
上(旧館)では関東大震災、空襲を経て、数年間は連合国総司令部(GHQ)に接収、激動の大正、昭和を駆け抜けた東京會舘に行き交う人々との物語で、実際のエピソードを元にフィクションとして書かれています。
上(旧館)では大正から昭和戦後まで。
・戦前のクラシック演奏会
・大賛会の手に渡る最後の日に出勤する従業員
・第二次世界大戦下で挙げる結婚式
・マッカーサーが飲んだといわれるオリジナルカクテル
・プティ・ガトー誕生秘話
と5つの短編で構成されています。
下(新館)では、昭和の建て替え後から平成の2度目の建て替えの時まで。
・2年前に夫を亡くし、建て替え後に東京會舘を訪れた夫人の話
・新米ボーイと越路吹雪のディナーショー
・かつて東京會舘クッキングスクールの通っていた4名が銀座で再開した日に東日本大震災に遭い、東京會舘で一晩身を寄せる話
・東京會舘での直木賞受賞の日
・2度目の建て替えの前の結婚式
下(新館)での東日本大震災の話は自分も経験している時なので一層小説に入り込むことが出来ました。
直木賞受賞時の話は辻村深月さんご自身の事のようですね。
「東京會舘とわたし」上下 感想
一気に読み終えてしまいました。
東京會舘にまつわる人々との繋がりを感じられて全ての話が心温まるものでした。
戦前、戦後、昭和後期、平成と時代を見続けた東京會舘。
私自身はクッキングスクールに行きたいと思っていただけで、特に會舘内のレストランや宴会場を利用したわけではないので、東京會舘に対する思い入れはないのですが、関わった方が読んだら、すごく感慨深く感じるのではないでしょうか。
実際私の母は越路吹雪の大ファンだったので、下(新館)でディナーショーの事が書いてあったので読んでもらったところ、当時の事を凄く思い出し懐かしんでいました。
やはり一気に上下読破していました。
私が特に興味深かったのが、上(旧館)の「しあわせの味の記憶」。
東京會舘の初代製菓部長の勝目清鷹は持ち帰りのできる、お土産用の箱菓子の製造を会社から要求され、最高の持ち帰りの製菓を生み出します。
特に東京會舘の製菓はバターの含有量が多いので、外に出すには不向きなのですが、妥協を許さない勝目の努力で今では東京會舘のスイーツの代表となっています。
今でこそスイーツのお持ち帰りなんて当たり前なので、そんな苦労があったなんてびっくりですよね。
実際にクッキーを買いに東京會舘に行ってみたくなりました。
本の中の美味しいお菓子
さまざまな試行錯誤の結果、昭和三十一年、勝目が第一号を焼き上げた。
何種類かのクッキーが入っているが、勝目が最初に完成させたのは、プラリネクリームをサンドした半生タイプのクッキーだ。
このソフトクッキーのしっとりした優しい味わいを引き立てるクリームは、一度アーモンドをカラメリゼしてから細かく、細かく砕くという凝ったものだ。土産用の菓子であっても、おいしく食べてもらうための努力は惜しまないという、むしろ量産とは真逆の方向に舵を切った結果だった。
「東京會舘とわたし」上(旧館)から引用
かなり凝ったクッキーですよね。
こちらは今でも東京會舘で販売されています。
この文章と実際の写真を参考に東京會舘のお菓子再現にチャレンジです。
クッキーはほとんど焼き色がついていないので、卵白を使用。
クリームは常温保存のようなので、バターや生クリームではだらけてしまうので、ショートニングにバター少々加え、作ってみました。
「東京會舘」プティガトー 作り方
材料
約15個分
バター 80g
粉糖 40g
卵白 15g
生クリーム 10g
薄力粉 100g
ドレンチェリー 3~4個(4~5等分にカットする)
(プラリネ)
アーモンドスライス 50g
グラニュー糖 50g
水 15g
バター 10g
(プラリネクリーム)
ショートニング 30g
バター 10g
粉糖 10g
プラリネ 10g
(仕上げ)
ホワイトチョコ 適量
1.バターを室温で柔らかくし、粉糖を3回に分けて加えホイッパーでよく混ぜる。
2.卵白を加え、よく混ぜる。
3.生クリームを加える。
4.ふるった粉を2回に分けて加える。木べらで切るように混ぜ、最後はすりつぶして粉がみえなくなるまでよく混ぜる。
5.星形の口金をつけた絞り袋に入れ、クッキングシートに花形に絞る。
ドレンチェリーをのせる。
6.160℃のオーブンで12~13分焼く。
7.プラリネを作る。グラニュー糖と水を鍋に入れ浸透させる。中火で熱し、鍋を軽く揺すりながら薄いきつね色になるまで加熱する。
火を止め、アーモンドスライスを加えて全体をからませ、バターを加え更に混ぜる。
8.天板にクッキングシートを敷き、⑦を全体に広げ、180℃のオーブンで10分程焼く。冷めたら10gを細かく砕く。
9.ショートニングとバターを柔らかくし、粉糖を加えホイッパーでよく混ぜる。砕いたプラリネを加える。
10.冷めたクッキーにホワイトチョコをコルネで絞る。
クリームを絞り、2つ重ねる。
*プラリネはたくさん出来てしまうけど、この量が最低限です。
カラメルは色が薄くても更にオーブンで焼くので気にしなくても大丈夫です。
余ったら砕いてヨーグルトやアイスクリームと共に召し上げってください。
実際の物を食べていないので出来具合はわからないのですが、結構いい線いっているかと思います。
クッキーだけでも美味しかったですが、やはりプラリネ入りクリームを挟むことでかなりリッチな味わいになります。
今度本物を買ってみなければいけませんね。
まとめ
震災や戦争と波乱に満ちた歴史を駆け巡った東京會舘は2022年11月1日で、創業100周年を迎えます。
100年たった今でも多くの人々に愛されている東京會舘なんですね。
今年は様々な記念イベントも行われるようですし、本に書かれているレストラン「プルミエ」や「ロッシニ」など今もなお営業は続いています。
「おもてなし」という日本の文化の本質を改めて感じさせられました。
日本の歴史を背負った東京會舘。
行ってみたくなりますね。
文庫本になりましたね。