「風のベーコンサンド 高原カフェ日誌」柴田よしき
「高原カフェ」「ベーコンサンド」
このキーワードだけで確実に美味しい小説だとわかりますよね。
読み始める前からどんな料理が出てくるのか楽しみです。
「風のベーコンサンド 高原カフェ日誌」あらすじ
離婚調停中の奈穂は東京での生活を捨てて、かつてペンション地だった百合が丘高原で女一人、カフェ「Son de vent」を開店。
「ひよこ牧場」の乳製品やハム、ソーセージ、ベーコン、「あおぞらベーカリー」の天然酵母のパン、有機野菜など自然な恵みいっぱいの素材を使って美味しい料理とスイーツ、そして一人で奈穂の一生懸命な姿に地元の方々は惜しみない協力をする。
村役場の村岡涼介もその一人。
離婚に応じない夫や涼介との関係も気になるところ。
奈穂の作るご飯が奇跡を起こす6つの物語が収められています。
「風のベーコンサンド 高原カフェ日誌」感想
百合が丘高原。軽井沢あたりを想像すればいいのかな。
夏は百合の花が咲き乱れ東京のような極暑もなく、観光客も多い。
でも冬は一転して雪に覆われ、日々の暮らしでさえ大変なところ。
カフェスクールに通ったとはいえ女一人でカフェ経営なんて無謀でしょうとは思いつつ、まず奈穂さんが作るお料理の美味しそうなこと。
まず興味がわいたメニューは「チキンコンフィ」。
チキンを80℃の温度のオイルでゆっくりと2時間くらい火を通し、オイルに漬けたまま保存。
注文が来たら取り出して温め、フライパンで焦げ目をつける。
外側パリっと中はしっとり。
簡単だけど手間はかかるのでなかなか自分では作らない一品だけに興味がわきます。
こちらにベビーリーフにオリーブオイルとバルサミコ酢であえたサラダとあおぞらベーカリーのパンにひよこ牧場のバターを添えて。
う~~ん、食べたくなっちゃいますよねぇ。
他にも「高原のチーズクリームシチュー」「百合が丘ポークソテー」「5種類のお豆のカレー」、これらのメニュー、スーパーの食材では普通になってしまうが、村の特産物で作って、なおかつ高原というロケーションであれば倍増の味わいでしょうね。
奈穂さんが凄いのは決して料理のプロではないのに、朝届いた野菜でその日のメニューが瞬時に決められること。
私も昔はカフェなんて開けたらいいなぁと夢見ていた時もあったけど、多分私ならガチガチにあらかじめメニューを決めてその食材を手配してという手順を踏むと思う。
奈穂さん、なかなかの職人さんですね。
村役場の涼介さんと百合が丘高原に新しくできた「リリーフィールド・ホテル」のレストランで食事をした際も料理への考察力が素晴らしい。
私なんかいつもレストランで食事してもただ美味しい!しか言えないのだから。
カフェ「Son de vent」、「リリーフィールド・ホテル」どちらのお料理も著者柴田よしきさんの文章力でしっかりと頭の中に思い描けるので、より一層食べたくなります。
小説自体はハッピーエンドで気持ちよく読破出来ました。
本の中の美味しい料理
再現したい料理はたくさんあるのですが、やはり「ベーコンサンド」でしょうか。
謎のお客田中さんがリクエストした「ベーコンサンド」。
奈穂さんが作るのは、イギリスパンに焼いたベーコンにマスタードとマヨネーズ、レタスとトマトの輪切りとともに挟んだもの。
田中さんは全てなしで、ベーコンをカリカリ過ぎず、べちょべちょにならない程度に焼き、脂を切らずにパンにのっけて芥子を少し広げて挟むだけというものをリクエスト。
ベーコンの焼き方が難しい。
満足して貰えるだろうか。ヒントはある。脂をきらずにベーコンにのせる。マヨネーズは使わない。となれば、ベーコンからしみ出した脂がパンにしみ込んで、調味料のかわりをする、ということだろう。
中略
正解は・・・・・・さくさくベーコン、だ。奈穂は、うん、と頷いた。フライパンでじっくりと、心持ち弱火でベーコンを焼き、しみ出した脂で赤みの部分を揚げるように火を通すと、残った脂肪の部分もさくっとした歯触りになる。焦ってつよびにすると焦げてしまうので注意しないと。
焼けたベーコンを少しつまみ食いし、さくさくしていることを確認したら、箸で振って軽く脂をきる。脂をきらないで、と言われたけれど、あまり多いとやはり口の中で気持ち悪いはず。でもきり過ぎないことが肝心。オーヴントースターがチンと鳴って、ほどよく焼けたパンの上に直接ベーコンを敷く。言われた通り、マスタードではなく芥子をほんの少し、さっとベーコンに広げる。もう1枚パンに載せ、完成。食べやすい大きさに切った。
「風のベーコンサンド 高原カフェ日誌」より引用
レシピにすると
①パンをオーヴントースターで焼く。
②ベーコンをフライパンで弱火でさくっとした歯触りになるように揚げるように焼き、脂を軽く切ってパンにのせる。
③芥子を少し広げ、もう1枚のパンで挟み、食べたやすい大きさに切る。
こんな感じでしょうか。
これではこの本のベーコンサンドの美味しさが伝わらないかな。
柴田よしきさんの文章は作る過程のイメージがつきやすいですよね。
こんな文章のレシピ本であれば読み物として楽しめそうです。
ということで作ってみました。
レシピは上記の通り。
6枚切りのイギリスパンで4枚のベーコンを使いました。
どうしてもレタスやトマトを挟んだりマヨネーズなどを使いたくなってしまいますが、ベーコンのみのサンドイッチってどうでしょうか。
ベーコンの焼き方が命なのでうまく出来たかわかりませんが、ベーコンの脂がパンにしみ込んでベーコンの美味しさがダイレクトに味わえてこれは美味しい!!
ただイギリスパンはスーパーの物、ベーコンはスーパーで一番いいものを購入しましたが、やはり天然酵母のパンでベーコンももう少し旨味が強いものがいいのでしょうね。
充分美味しかったですが、素材自体の美味しさが決め手のような気がします。
天然酵母のパンととびっきり美味しいベーコン。
手に入ったらまた作ってみたいです。
まとめ
ベーコンサンドの描写が美味しすぎました。
またほかの料理も作ってみたくなります。
素材自体の力強さと同時に素材を損なわない調理方法も大切なんですよね。
改めて料理の奥深さを学んだような気がします。
美味しさに説得力があるのは、柴田よしきさん自らレシピを試してみているからのようです。
行動を起こすことの大切さ、人々の温かさ、前向きな気持ちにさせてくれる素敵な小説でした。
続篇も出ているようなのでこちらも早速読まなくちゃ。
世界一のベーコンで検索してみました。