菜の花食堂のささやかな事件簿
最近料理を題材にした日常ミステリー小説が増えましたね。
気軽に読めるのでつい買っちゃいます。
こちらも美味しい料理がたくさん出てきますよ。
「菜の花食堂のささやかな事件簿」あらすじ
靖子先生は菜の花食堂を一人で経営する傍ら月2回料理教室を開催。
語り手の館林優希はちょっとした縁がきっかけで料理教室の助手を務めます。
料理教室では1つの野菜をテーマに家庭的な料理を教えてもらえます。
料理教室やご近所のちょっとした事件を料理を介して靖子先生が解決してくという短編集。
事件はささやかですし、解決後はほっこりした気分になれるし、料理のコツも学べるしとなかなか盛りだくさんの内容です。
「菜の花食堂のささやかな事件簿」感想
描かれている文章意外に秘密はなし。なので私でも解けるはずなのにちっともわからない。靖子先生の観察力には脱帽です。
このささやかなミステリー自体の内容も秀逸ですが、お料理にも魅力がたっぷり。
まずは料理教室のメニューが日常にも使えてとっても便利なんです。
たとえば「茄子は覚えている」では茄子料理がテーマ。
メニューは焼き茄子、茄子の揚げ浸し、茄子とミョウガの浅漬け、蒸し茄子の胡麻だれソース掛け、茄子の味噌汁、茄子のディップ、茄子のドライカレーの7品。
どれも簡単そうだけど、これだけ茄子料理を覚えられればバリエーションが増えますね。
シンプルな料理って本当に美味しく作るのが難しんです。
靖子先生の料理教室では美味しくするコツや豆知識が満載。
例えば茄子のあく抜き。
「切れ目が入ったら、しばらく灰汁を抜くために塩水にさらしておいてください。茄子が塩水を吸うことで、揚げたときに余分な脂を吸収するのを防ぎますから、十分ほどそのままにしてくださいね。」
「菜の花食堂のささやかな事件簿」より引用
とか、「はちみつはささやく」ではトマト料理がメニューなんですが、こちらではにんにくについて
「ニンニクの芽には栄養が詰まっているから、えぐみも強いんですよ。それに火も通りやすいので、ほかの部分より焦げやすいんです。じゃがいもの芽のように毒性があるわけではありませんが、ひと手間掛けた方が味も繊細に仕上がりますから、ゆとりのある時は取り除くようにしてくださいね」
「菜の花食堂のささやかな事件簿」より引用
あらら、にんにくの芽って毒性が強いから必ず取り除かなければいけないと思っていました。
普段はそんな神経質に取り除かなくても大丈夫だったんですね。
そんなちょっとした事が所々描かれていますので、読むだけで料理の知識を得ることが出来ます。
作り方も大事ですが、何気ない豆知識って意外に知っているつもりでいい加減だったことが多いことに気づかされます。
様々な視点で読めるミステリーも楽しめる美味しい小説でした。
本の中の美味しい料理
食堂と料理教室が舞台なので美味しいものは満載です。
メニューを見ただけで一応は作れそうなものばかりなので、献立に困ったときに参考になりそうです。
美味しい料理はたくさん出てくるのですが、「ゴボウは主張する」では料理教室のテーマはゴボウ。
メニューは、きんぴらごぼう、ゴボウチップス、ゴボウと蓮根のマヨネーズサラダ、豚肉の柳川風、ゴボウと牛肉の炊き込みご飯、豚汁。
「この柳川風、おいしいですね。見た目は灰汁で少し黒ずんでいるけど、ゴボウのうまみが生きていますね」
中略
「ほんとに、これだけでご飯が何杯でも食べられそう」
ゴボウの強い風味と豚肉のうまみをだし汁が中和させ、さらに卵が加わってひとつにまとめる。これほど素晴らしいハーモニーがあるだろうか。
「菜の花食堂のささやかな事件簿」より引用
最後に靖子先生はこの料理は豚肉ではなくゴボウが主役と主張しています。
確かに、ゴボウがなくてはこの料理は引き立たないですよね。
主役はゴボウなのかもしれません。
見栄えはあまりよくないけれど、しみじみ滋味深い料理だなぁと感じます。
「柳川風」とは
柳川風の名前の由来には2つの説があります。
①江戸、日本橋横山町の「柳川」という屋号のお店が草案した料理という説。
②福岡県、柳川産の土鍋を使ったからという説。
本来の柳川鍋はどじょうをごぼうと卵とともに煮た鍋で、柳川風といったらアナゴやうなぎ、牛肉などを使い、ゴボウと卵とともに煮た料理を指すことが多いようです。
何気なく使っている柳川風。
調べてみると面白いですね。
ということで、「豚肉の柳川風」作ってみました。
「豚肉の柳川風」作り方
(2人分)
材料
豚薄切り肉 100g
ごぼう 1/2本
まいたけ 1/2パック
卵 2個
(煮汁)
だし汁 1C
砂糖 小匙2
酒 大匙1
みりん 大匙1
しょうゆ 大匙1
豆苗や三つ葉など青いもの 適量
①ゴボウはささがきにし、水にさらし水気を切っておく。まいたけはほぐしておく。豚肉はひと口大にカット。
②鍋に煮汁の材料を合わせ、ゴボウと豚肉、まいたけを入れて蓋をし、沸騰したら3~4分煮る。
③ゴボウが柔らかくなったら、溶き卵を回し入れ再び蓋をして卵が半熟程度になったら火を止め、青みを散らす。
靖子先生のレシピは多分、豚肉とゴボウ、卵のみだと思いますが、まいたけはゴボウと相性がいいので加えました。
このあたりはお好みで。
サッと作れてしみじみ美味しい料理です。
今日の献立にいかがでしょうか?
まとめ
凝った料理を覚えるのもいいけれど、普段の料理に重宝出来そうなので、こんな料理教室があれば通ってみたいですね。
「菜の花食堂のささやかな事件簿」はシリーズで現在5巻まで出版されています。
お料理とミステリーの組み合わせが大好きな方にはお勧めですが、事件は本当にささやかですのでその点はご愛敬。
シリーズを読み進めていくと、靖子先生の秘密や菜の花食堂や料理教室の行方、また助手の優希の成長も描かれているので全巻読破したいものです。