「明日の食卓」椰月美智子
何も情報もなく手に取った1冊。
タイトルからほのぼの系を想像したのだけど、真逆でなかなかシビアな作品でした。
菅野美穂、高畑充希、尾野真千子の主演で映画化もされていましたので、なかなかの問題作だったんですね。
犯人は誰?子育てという身近な問題を扱いつつミステリー要素を感じさせ、読んだ後はつい考え込んでしまいました。
「明日の食卓」あらすじ
小学3年生の「石橋ユウ」という同姓同名の息子を持つ3人の母親たちのストーリー。
専業主婦の石橋あすみ、夫はサラリーマン、フリーライターの石橋留美子の夫はフリーカメラマン、そしてシングルマザーの石橋加奈。
平穏な家族が些細なことでジワジワと壊れていく過程を描いています。
3家族に繋がる部分はないのですが、冒頭で「ユウ」を死なせた話が書かれているので、この3家族のうちの誰かが犯人なの?
どこの家庭でももしかしたら起きうるのではないかと思わせる問題を提起した小説です。
「明日の食卓」感想
実際起こりうること。
どの家族も夫がどうしようもない屑男。
まだまだ子育ては母親の仕事と捉える男性が多いことを実感します。
母親は息子を愛しています。
それでも一歩間違えると暴力、虐待に発展しかねないのだなと痛感させられました。
ども母親が「ユウ」を殺したのか?
いや一歩間違えたらみんなに当てはまりそうです。
実際虐待問題と少子化問題って実は繋がっている気がします。
子育ては本当に大変。
お金さえあればという短絡的な考えではなく、様々な角度から問題を捉えてほしいけど、そんな大局的に考えられる政治家は日本にはいないのかな?
本の中の美味しい描写
タイトルにから察して美味しい食事がたくさん出てくるのでは?と期待したのですが、食事のシーンは出てきますがそれはあくまでの日常の一環。
正直興味が湧いたシーンもないのですが、唯一あっ、わかる!と思った場面。
太一と優を送り出して、ようやくほっとひと息つける。リビングの大きなテラス戸から見える庭を眺めながら、あすみはゆっくりと朝食を食べる。自分用に甘さ控えめに作ったイチゴジャムをトーストに塗ってかじりつく。サクッとした歯触りのあとの、ジャムのしんなり感。ああ、今日もいい一日になるなあと、なんの根拠もなく思う。
「明日の食卓」より引用
一人になった解放感も伴ってトーストの炭水化物とイチゴジャムの糖分がシンプルに体内に行き渡るような感じ。
ほんのひと時の瞬間だけど幸せ感MAXを味わう事が出来るような気がします。
何の変哲もないイチゴジャムトースト。
こちらは専業主婦のあすみのまだ幸せだと思われるひと時。
この後、あすみの家族はどんどん崩壊を始めます。
イチゴジャムトーストは幸せの象徴だったのかもしれません。
それにしてもトーストって不思議ですよね。
こんがり焼いた食パンにバターやジャムをたっぷり塗る。
それだけなのに毎朝食べてもちっとも飽きることはない。
高級食パンがブームになりましたが、スーパーの食パンでもトーストにすると充分美味しい。
私もちょっと頑張ってジャムを手作りしてトーストしたパンにたっぷり塗っていただきました。
こんな幸せそうなあすみの家族でしたが実は一番悩ましいし、その後も実は一番心配。
続篇があるような気はしないのだけど、毎日の食卓の中で家族を築きあげてほしいですね。
まとめ
特に美味しい描写があったわけではないので、悩みましたが是非皆さんに一度読んで欲しいかなと思って紹介させていただきました。
映画の方も気になりますね。
私が一番気になる石橋あすみは尾野真千子さんが演じているようです。
感情移入しそうです。