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料理界のトレンドを牽引する南インド料理店総料理長エリックサウス稲田俊輔「食いしん坊のお悩み相談」~だけスパ

稲田俊輔

 

南インド料理店「エリックサウス」総料理長の傍ら様々なジャンルの飲食店の業態開発やメニュー開発を手掛けていらっしゃる方。
著書も多数あり、「おいしいものでできている」「人気飲食チェーンの本当のスゴサがわかる本」「南インド料理店総料理長が教えるだいだい15分!本格インドカレー」「
ミニマル料理:最小限の材料で最大のおいしさを手に入れる現代のレシピ85」「異国の味」等々多彩な才能を持ち合わせた話題の方です。

 

「食いしん坊のお悩み相談」稲田俊輔 リトルモア

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稲田俊輔さんは最近テレビでもよく気かけるし、レシピ本や食関係の本のコーナーに行くとたくさん置いてあって、とっても気になっていた方なんですけれど、今回本の帯の東海林さだおさんの「この本を読むと、以降、食べ物がおいしく感じられるようになります。十倍ですよ。千円のラーメンが一万円の味になる。保証します」と。
我が敬愛する東海林さんがおっしゃるならと購入させていただきました。

 

食べる・飲む・料理にまつわるお悩みや疑問に稲田氏が相談者に寄り添いながら回答するというエッセイのような1冊です。

 

「食いしん坊のお悩み相談」感想

稲田氏の文章もずばぬけているのだが、読者の質問内容の観点が意外に斬新で面白い。
最初の質問から「自分は冷たいオムライスの方が好きなのかもしれない、イナダさんはどちらがお好きですか?」
いやどっちでもいいだろうって。自分の好みを語られてもなぁと呆気にとられていたが、稲田氏は丁寧に返答していらっしゃるのはさすが。
「すき焼きに生卵は合わないのでは?」というこれまたどうでもいい質問にも稲田流「すき焼きの流儀」としてすき焼きの食べ方を伝授されています。
上等なすき焼き用牛肉とそこそこの牛肉の2種を購入し、最初は上等な肉を堪能し、野菜を加えたあたりで生卵を使用し、そこそこのお肉を追加して煮詰まったころに生卵をたっぷり絡めて食べるというものですが、私は卵派なのでこちらもお好きにどうぞと突き放してしまいたくなります。

そんなことで悩むのか!!と最初は質問者に対してとまどいを持ちつつ、皆さん食に対して真摯に向き合っていらっしゃるのだと読み進めていくうちに理解してきました。

 

我が家では、肉じゃがの評価があまり高くなく、その理由を夫婦で考えたところ、「じゃがいもの味と食感を楽しむのに汁気が邪魔だから」という結論になりました。
~中略~
インド料理でじゃがいもを食べるようになってから好みがくっきりしたのですが、じゃあインド料理の汁気の多いじゃがいも料理はOKなのかといえば、長米だと気にならないので、最終的には白米との関係構築の滑らかさの問題なのかなと思ったりしています。

「食いしん坊のお悩み相談」より引用

 


あまり好きでない料理や食材に対して私なら単純に苦いから、辛いからなんていう理由しか思い浮かばないが、ここまで考察する姿勢は確かに食いしん坊だからなのか、自分の短絡な考えを恥じるばかりです。

「崎陽軒のシウマイのおいしさがまだ摑めません」
稲田氏がどう答えるのか!?崎陽軒ファンの私のは興味津々。
きっと崎陽軒のシウマイを絶賛してくれるものだと思っていたところ、まさかの551派だったとは!
いや、551の焼売は確かに美味しいですよ。でも崎陽軒のシウマイとは別次元のもの。比べてはいけないのです。
なんて、若干抗議したくなる個所はありつつも、とにかく稲田氏のウイットに富んだ文章は読んでいて面白いし、改めて食に関して様々な思いを発見をしたような気がします。

 

 

本の中の美味しい料理

「パスタの具が余る」

食事を食べすすめるときに、ご飯の場合だと自分なりに完璧な道筋をたどれるのですが、パスタの場合だと(具だくさんだと特に)、うまくいきません。具が余りまくってしまいます。かといって、最初から具を多めに食べていこうと思っても、良いバランスのまま進めません。
麺だけ先に終わっても嫌だし、麺だけ後に残っても嫌だし、一口分の具の量も多すぎない方がいいし・・・。付け合わせのスープがあればそれでシメてOKかと思いきや、最後になったら冷めてるし・・・。
何かコツなどありましたら、教えてください。

「食いしん坊のお悩み相談」より引用

 

 

カレーの時にルーとご飯のバランスで悩むときはあってもパスタではあまり意識したことはなかったけれど、稲田氏の「これは個人差もあるでしょうが、しかしやっぱりパスタはパスタそのものを食べたいのです。」と。
私も麺が好きなので稲田氏と同じで具を割と早く食べてしまうので妙に共感。
麺を存分に味わいたいという事で、稲田氏は「だけスパ」を提案。

 

僕はその「なるべく麺に専念したい」という思いを極端な形で叶えるために、ある時「だけスパ」という概念を発明しました。具は一種類だけ、調味料も最小限で、それをいかにおいしく作るかという縛りプレイ。具がピーマンだけのやつが今のところ最高傑作です。味付けは塩とバターのみです。ぜひお試しください。

「食いしん坊のお悩み相談」より引用

 

 

 

 

早速作ってみました。

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分量の目安はスパゲッティ1束分にピーマン2~3個、バター大匙1+小匙1、塩こしょう。

 

ピーマンはせん切りにして、フライパンにバター大匙1で炒める。
茹でたスパゲッティを加え、茹で汁大匙1~2加え、全体混ざったらバター小匙1と胡椒を加えて出来上がり。

 

にんにくやベーコン、きのこや他の野菜など加えたくなってしまいますが、ぐっと我慢。ピーマン自体は大好きなので3個入れちゃいました。
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ピーマンの千切りは「きょうの料理」で土井善晴さんが丸のまま手でギュッと潰してから千切りにしていましたが、種もヘタも食べられるし、栄養価が高くなって一石二鳥。
種ごとでいいとわかってはいたけれど長年の習性でつい取り除いてしまいました。



さて、お味の方は・・・・!?
基本味の想像はつきますよね。一口目はバターで炒めたピーマンの味がシンプルにまあ普通に美味しい。塩味は茹で汁だけなのでちょっと心配でしたが丁度いい味加減。食べ進めていくうちに口に運ぶことを辞められなくなって、美味しさが増していく感じが不思議です。
ピーマンだけで物足りたくないのか?と思ってましたが、何も加える必要なし、反対に加えない方がいい!!
ピーマンの苦みや青臭さが程よくて正直どうってことはないはずなのに、また食べたくなるやみつきになる美味しさでした。



 

まとめ

 

読者の質問自体も視点が面白かったが、稲田氏の回答が相談者に真摯に向き合っていて、最後まで楽しめた1冊でした。
「エリックサウス」はまだ行ったことがないのだけど、都内にも店舗がいくつかあるので伺って稲田氏のテイストを味わってみたいものです。

エリックサウス お店の情報 ERICK SOUTH 南インド料理店 – エリックサウス お店の情報