「あまからカルテット」柚木麻子 文春文庫
「BUTTER」では木嶋佳苗事件を題材にした重厚な長編を描き、「ランチのアッコちゃん」などのアッコちゃんシリーズでは明るくちょっとコミカルで元気になるビタミン小説と同じ作者とは思えないほどの多彩な柚木麻子さん。
「あまからカルテット」実は表紙の稲荷寿司に惹かれて購入(;^ω^)
想像通りパワーを貰える尚且つ美味しい小説でした。
「あまからカルテット」あらすじ
女子高時代からの仲良し4人組はアラフォーの今でも仲良し。ピアノ講師の咲子、編集者の薫子、美容部員の満里子、料理が上手で唯一結婚している由香子。性格が全然違う4人が互いの恋や仕事のトラブルを解決する連作集。
それぞれの恋や仕事の悩みやちょっとした謎解きに美味しそうな料理を絡めているところがさすが柚木麻子さん。
多分ご自身も相当美味しいもの好きで、そして流行に敏感な方なんでしょうね。
4人の友情の深さにも感動ですがそれ以上に4人の味覚の鋭さに脱帽でした。
「あまからカルテット」感想
私自身も高校時代から4人グループが卒業後ウン十年たっても続いているのでこの小説には親近感が湧きます。
アラフォーの頃は確かに恋愛や結婚、仕事と悩み多い時期なので互いに相談したりとはあったけど、一番何かと忙しい時ではあったので4人が揃ってなかなか会えなかったし、ここまでお互いの懐には入り込むことはなかったです。
だからちょっと羨ましく感じたけど、いまだに4人で集まって美味しい食事を楽しみながら他愛もない会話で盛り上がっているのは同じなのかな。
改めて友達の大切さを実感。
食いしん坊、美味しい物好きが4人の仲の良さの秘訣なのかなと
本の中の美味しい料理
第1話では稲荷寿司、2話では甘食、3話はハイボール、4話ではラー油、最後はおせち料理と美味しそうなものが登場します。
また実際のお店、例えば稲荷寿司の話では谷中の「三花」というお店や甘食では本郷三丁目の「明月堂」、ラー油では石垣島の「辺銀食堂」が登場。
また神楽坂の柚子塩ラーメンと水餃子がたいそう美味しいと評判の「柚子庵」というのは架空のお店のようですが実際に「俺流塩ラーメン」というお店では柚子塩ラーメンを提供しています。
読み進めていくうちにお店にも行きたくなっちゃいますね。
特に私は稲荷寿司が大好物で結構稲荷寿司の美味しいお店を食べ歩いたのですが谷中の「三花」は知らなかったです。
最近の稲荷寿司はあっさりタイプが多いのでこちらのお店の写真を見るとしっかり色づいた揚げがこっくりと美味しそうでこれはまさに私好み。
まさに「お稲荷さん」と呼ぶにふさわしい風格ある稲荷寿司です。
ちなみに私の中での一番は豊橋の稲荷寿司。
こちらもお揚げの味がしっかり染み込んでこく旨じゅわっと美味しいです。
名古屋方面に行った時には必ず購入します。
こちらは西武池袋地下1F 西部食品館(おかず市場)でも購入できるようです。
小説の中ではピアノ講師の咲子が花火大会で出会った隣のシートの男性から騒がせたお詫びにと差し出された稲荷寿司。
一目惚れもあったと思うけど稲荷寿司があまりにも美味しかったので余計に火が付いちゃった感じがします。
じゅっと煮汁が染み出した、こっくりと甘く煮ふくめられた油揚げ、硬めに炊かれたすし飯がほろりと崩れていく。咲子はため息を漏らした。
「あまからカルテット」より引用
自分でも同じようにこく旨じゅわっとした稲荷寿司が作れないものかと試行錯誤したのですが、これが意外と難しい。
色々作ってみてこれは!と思ったのが栗原はるみさんのレシピでした。
最初にレシピを見た時にこんなにお砂糖を入れてさすがに甘すぎるのではと危惧してしまい、お砂糖の量を半分に減らしてみました。
これはこれで美味しかったのですが、多分レシピ通りのお砂糖の分量でもいける!と思い直し再度チャレンジ。
これがもうほんとドンピシャに美味しい!!
最近のはるみさんのレシピはお砂糖の量が減っているのですが、甘辛じゅわっの稲荷ずしがお好きな方は是非こちらを試してみてください。
ちなみに小説では「黒糖」がポイントのようですがはるみさんのレシピは「ざらめ」です。
稲荷寿司 レシピ
(4人分)
材料
油揚げ 10枚
だし カップ3
米 カップ2
すし酢 カップ1/2
干ししいたけ 3枚(戻す)
かんぴょう 10g(戻す)
れんこん 40g
赤唐辛子 1本
みょうが 1個(小口切り)
いりごま(白)大匙1
醤油、みりん、砂糖、ざらめ糖、酢、塩
1.油揚げは半分に切り、袋状に隅まで開く。熱湯に通して油抜きをし、ざるにあげる。粗熱を取って、水気を絞る。
2.鍋にだしカップ2、醤油カップ1/3、みりんカップ1/2、砂糖大匙3、ざらめ糖大匙2を煮立てる。①を加えて料理用の紙で落しぶたをし、弱めの中火で煮る。煮汁が1/3量になったらだしカップ1、醤油、みりん各カップ1/4、砂糖大匙2、ざらめ糖大匙4を合わせて加え、汁気が少なくなるまで煮る。バットに広げて冷ます。
3.米は水カップ1+3/4で炊き、すし酢を合わせる。
4.しいたけとかんぴょうを5mm角に切る。小なべにしいたけの戻し汁カップ1/4、醤油、みりん各大匙1+1/2、砂糖大匙1を合わせて煮立て、煮含める。
5.れんこんはいちょう切りにして酢水にさらす。耐熱容器に酢大匙2,砂糖大匙1、塩少々、水気をふいたれんこんを入れてからめラップフィルムをし、電子レンジ(600W)に約40秒かける。ラップィルムで落しぶたをし、冷ます。
6.③のすし飯を2等分し、半量に④を、残りを汁気を切った⑤とみょうが、白ごまを混ぜ合わせる。各10等分して軽く握り、②の油揚げに詰めて形を整える。好みで紅しょうがやしば漬けを添えて。
「きょうの料理」栗原はるみ
ご飯の方は市販のすし酢を加え甘酢生姜やカリカリ梅を刻んだものとかを混ぜるだけでも美味しいのでお揚げは煮ておいて冷凍しておくと便利です。
うどんやおそばとかに入れても美味しいですよ。
甘いけれど、甘辛こく旨じゅわっと本当に美味しい稲荷寿司です。
小説の様に黒糖で作るのもありなのかな。更にこく深になりそうですね。
まとめ
友達だから何でも相談できるということはなく、多分年齢を重ねるほど言えない事が多くなって、それでも一緒に美味しいものを食べておしゃべりに花を咲かせるだけで友達の存在の大きさを感じます。
友達ってほんといいですね。
まだまだ4人から目が離せないです。
続巻出て欲しいですね。
お取り寄せも美味しそうです。