「山の上のランチタイム」高森美由紀
オムライスの表紙、目次に記される料理が美味しい小説なんだなと感じさせます。
そして多分ほっこりタイプのお話なんだと・・・・
「山の上のランチタイム」あらすじ
山の上のレストランで働く美玖、都会で修行したオーナーの登磨はイケメン、お店を手伝う登磨の中二の甥っ子、瑛太と美玖を中心に描かれた連作短編集です。
明るくポジティブな性格だか典型的おっちょこちょいの美玖ちゅんはオーナーの登磨に恋心を抱いて・・・と最初はほっこりおだやかな内容かと思いきや、美玖ちゃん、実は辛く悲しい過去を背負い、瑛太は不登校、オーナーの過去の恋・・・となかなかの重たい展開。
それでも出てくる料理が艶やかで作ってみたい、食べてみたいと思うものばかりで、ちょっと重たい内容で読み進めづらくなる部分も美味しい料理の描写が、最後まで読ませるよう加担させているような気がします。
最後はみんなの優しさと美玖の前向きに生きる姿に感動。
なかなか深みがあって、考えさせられて引き込まれるストーリーでした。
「山の上のランチタイム」感想
基本山登りは苦手なので、小学生の遠足くらいでしか山の上で食べる美味しさというものの経験はほぼないのですが、汗をかいて苦労して登った頂上でのご飯は山の空気が調味料にもなって極上の美味しさだという事は想像がつきます。
ただ昨今山登りの遭難も増えているし、安易に山を登ることはどうかと思う。
美玖ちゃんは山での辛い過去があったにも拘わらず、無謀な事に巻き込まれることが多いので読んでいてハラハラしてしまうし、心配するお父さんの気持ちはよ~~くわかるし、理解しづらい所も多々ありました。
それでも失敗ばかりの美玖ちゃんに対し、だんだん応援したくなる気持ちが沸き上がり、美味しい料理と共に最後は一気に引き込まれていきます。
美味しいごはんは別の生命の命を頂くという行為を私たちは「いただきます」という言葉の意味を忘れてはいけないのだと気づかされました。
本の中の美味しい料理
各章、美味しい料理は目白押し。
美玖ちゃんのメニューの文章が可愛らしい。
採れたてタラの芽のサクサクフリット(店長のように上質は山菜をふわっと軽い天ぷらにしました)
苺ごろごろシュークリーム(おすすめ!店長のように爽やかな苺がたっぷり!)
とか・・・
トリュフチョコレートのメニューでおばあちゃんがとりゅふてなんだべと聞かれ、チョコバナナみたいなものですよとの説明には思わずにやり。
当たらずしも遠からずですよね。
その中でも物語のキーにもなる新米むすびがとても気になる。
特A青天の霹靂 新米むすび(店長のように輝かしいブランド新米の旨味を、塩とオリーブオイルで引き出しました)
「しっかり握ってあるのに、口の中ですぐに解れます。お米の味に雑味がなく、すっきりしてて、オリーブオイルと塩にお米の風味が引き立てられています。硬さも粘りもちょうどよくて、噛み締めると。ひと粒ひと粒から深い旨味が出てきます」
「山の上のランチタイム」より引用
この描写、食べたくなっちゃいますよね。
それでは・・・・・
とにかくシンプルなので、お米、塩、オリーブオイルと材料自体がよくなければだめですよね。
小説では特A青天の霹靂というブランド米、オリーブオイルは小豆島産、のだ塩という辛すぎないまろやかな風味の塩を使用。
このために買うのも何なのでお家にあるイタリアのオリーブオイルとゲランドの塩、お米は魚沼産のこしひかりで作ってみました。
「新米むすび」作り方
材料
ご飯 2杯分(もち麦入りです)
オリーブオイル 小匙2
塩 小匙1/2
ご飯にオリーブオイルを加えよく混ぜる。
手を濡らし、軽く水気を切って塩をまぶし、ご飯を握る。
直接手で握るのに抵抗のある方は塩をご飯に混ぜてラップで握ってもOKです。
ただこの方が塩味がしっかり感じられて美味しい気がします。
お好みでオリーブオイル、塩の分量は足されてみてください。
オリーブオイルの香りがいいですね。
シンプルなだけに素材の美味しさが際立ちます。
どうしてものりを巻いたり、具材を入れたくなっちゃいますが、塩とオリーブオイルのみでも完成された一品でした。
山の上で食べたら一層美味しいでしょうね。
ちなみにオイルを加えると傷みにくくなるようです。
まとめ
美味しく読み終えました。
チーズがとろ~っと溶け出す新鮮セリ入りライスコロッケや苺ごろごろシュークリーム、ミルフィーユサンドイッチなど作りたいものばかり。
美玖ちゃんは失敗ばかりのドジっ子だけど実は味覚は天下一品。
イケメンオーナーは美玖ちゃんの鋭い味覚を買ってるし、二人の関係も気になります。
続篇も出ているようなのでこちらも楽しみです。
ポチッとしていただくとうれしいです。
よろしくお願いします。